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指標の知識とFAQ


経済指標について
世界の経済は各国の通貨で繋がっていますが、それらのうちUSD(米国ドル)、EUR(ユーロ)、GBP(英国ポンド)、JPY(日本円)、CHF(スイスフラン)の5通貨をメジャーカレンシー(Major Currency)と呼んでいます。
中でもUSD(米国ドル)はキーカレンシー(Key Currency)と呼ばれており、世界の基軸通貨としての役割を担っていますから、他の通貨の重要経済指標の発表と比べると断然影響力があるわけです。
例えば米国で重要経済指標がありますと、当事国の通貨であるUSD(米国ドル)に一番影響がありますが、この発表に伴なってその他のメジャーカレンシーの5通貨にも多少なりとも影響が出ることになります。

主な経済指標
USDの主な経済指標
FOMC議事録、雇用統計(非農業部門雇用者数・失業率)、貿易収支、GDP(国内総生産)、ISM指数(製造業指数)、住宅販売統計、PPII(生産者物価指数)、CPII(消費者物価指数)、小売理売上高

EURの主な経済指標
IFO(独などの企業景況感指数)、雇用統計(独などの失業率)、12ヶ国GDP、12ヶ国景況感指数、12ヶ国鉱工業生産指数

AUDの主な経済指標
雇用統計、貿易収支、企業景況感指数、小売売上高、CPI(消費者物価指数)

このように経済指標はいろいろあるのですが、市場に強烈なインパクトを与えるものからそうでないものまで存在します。

経済指標の分類
経済指標は一般的に次の大きく6つに分類されます。

1. 雇用関連の経済指標

労働省から毎月第1金曜日に発表される米雇用統計がS級と呼ばれる有名な経済指標です。雇用統計は他の国でも重要な経済指標なのですが、世界の基軸通貨が米ドルであるため、米国の雇用統計は特に市場の注目が集まります。その中でも非農業部門の雇用統計が相場を大きく動かすようです。
その他、毎週木曜日に発表される新規失業保険受給申請者数や、ISM製造業の雇用部門の発表も雇用関連の経済指標です。

2. 消費関連の経済指標

小売売上高や住宅着工件数などがあります。よく「米の消費は車と家を見ればよい」といわれるように、毎月中旬に発表される米小売売上高と、毎月16〜19日に発表される住宅着工件数が相場を動かします。A〜B級と呼ばれる経済指標です。

3. 物価関連の経済指標

毎月中旬に発表される消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)などがあります。これらの物価関連の経済指標ではインフレの状況を見ますが、市場がインフレを問題視している時期とそうでない時期とでは反応が異なる場合があります。
CPIは商品だけではなくサービスも含めた指標内容となっていて、これもA〜B級の経済指標です。

4. 各国の収支に関する経済指標

代表として貿易収支があります。国の収支には、経常収支と財政収支がありますが、その経常収支は貿易収支、貿易外収支、移転収支に分類されており、貿易収支はその中の1つです。しかし、為替相場ではこの貿易収支がとりわけ注目されます。あまり市場反応のないときもありますが、米の赤字問題が浮上している時には相場を大きく動かすことがあり、これはA級の経済指標です。その他に財政収支も毎月発表されますが、比較的市場の反応は鈍いようですからC級指標です。

5. 各国の経済全体に関する経済指標

GDPと毎月第1営業日に発表されるISM製造業景況指数があります。GDPは国全体でどのくらいの経済活動(付加価値)があったのかを示すもので四半期分として3ヶ月ごとに発表されます。
このGDPには、速報値、改定値、確定値の3種類があり、特に速報値に市場が注目する、S〜A級と呼ばれる指標です。
ISM製造業景況指数はA級経済指標です。

6. 各国の政策金利の発表

政策金利を思惑して市場は事前に織り込みをしていきます。ですので市場の思惑どおりに金利が動いて発表された時でも、織り込み済みであまり反応がない場合や、その後の金利上昇の思惑が見込めない場合には「とりあえずの頂点」という理由から利上げ発表があった直後に相場が逆に下がってしまったりすることもあります。
しかしながら、市場の予想と違う政策金利の発表があった場合ではサプライズとして大きく為替相場を動かすこともあります。政策金利はS級の経済指標と呼ばれますが、市場反応は単純ではないようです。

また、経済指標はその性質から先行指標、一致指標、遅行指標とも分類されます。

先行指標というのは将来の経済状況や景気を見通すシグナルとなる指標で、住宅着工許可件数、設備投資、消費財新規受注、マネーサプライ、消費者信頼感指数、失業保険新規受給申請件数、週平均労働時間、金利スプレッド(10年国債とFFレートとの差)などがあります。
住宅許可件数などは、景気が実際に後退期に入る何ヶ月も前から減少が始まるといわれています。

また、一致指標というのは現在のトレンドと一致して上下するために、現在の景気の状況(トレンドが変化しつつあるのかどうか)を示すシグナルといわれている指標で、非農業部門雇用者数、鉱工業生産、個人所得などがあります。

最後の遅行指標というのは景気の追認のシグナルとなる指標で、GDPや失業平均継続期間などがあります。

指標での市場の動き
上記でおおまかな分類を示しましたが、最近では実践的なのは景気指数を見ることだと言われており、おおむね雇用統計、住宅着工件数および許可件数、新築住宅販売戸数、中古住宅販売戸数、乗用車およびトラック販売台数、失業保険新規受給申請件数、建設支出、の7つが該当します。

特に米雇用統計は失業率、非農業部門雇用者数、週平均労働時間、時間当たり平均賃金といったデータによって個人所得も推定できるため、消費動向で財政や金融政策も影響を受けることになります。

一般的に貿易収支、景況指数、GDP、小売売上高、住宅着工件数、雇用ネット変化は強い数字ほど良く、失業率や新規失業保険申請件数などは低いほど良いです。

但し、経済成長が低迷している場合の物価指数は微妙な市場反応となる場合があり、GDPがプラスで安定している時に消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)が強い場合ではインフレによる利上げ期待から通貨にとっては良い方向にはたらくことになり、GDPがマイナスで低迷している場合は、スタグフレーション懸念から強い数字が逆に悪い方向にはたらくこともあるようです。

他にも政策金利の上昇は為替市場では好感されますが、株式市場では逆に嫌気されます。しかしお互いに経済成長と密接に相関がありますから、最終的には「経済にとってプラスかマイナスか」が、経済指標の良い悪いの判断となるようです。
また、貿易赤字や住宅市場関連の指標は悪くてもそれが慢性的だと市場反応が鈍ることがあります。悪材料をある程度織り込んでしまうと、その織り込みの範囲で予想できる程度では反応しなくなるというわけです。さらに期待感というのもあって、現状的では悪くても他に期待する何か大きな要因(大統領選挙など)があれば、上げることもあるようです。

また、為替市場は過去玉のポジションの偏り(以前に建てているポジションの偏りを解消したり修正しようと調整される傾向にもありますし
(参考:http://www.dukascopy.com/swiss/japanese/marketwatch/sentiment/)、貿易に起因した外貨の需要の変化も当然影響を受けます。

また、経済指標発表では予期できない特徴として、良いニュースの後に下落する"Buy the Rumor,Sell the Fact"とか、"News Reversal"と呼ばれる動きをみることがあります。
プロは「噂に基づいて買い、事実に基づいて売る」という習性があるらしく、思惑で買い上げていた短期筋が好材料や経済指標の結果という誰もが知ることとなった事実から、好材料が出たときの一瞬の上昇に一般投資家が食らいついて噴け上がったその時に利益確定で売り抜けるといったことをやってのけますから、とても一筋縄ではいかないようです。

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